人材コンサルティング会社Towers Watsonの行った調査「2010 Global Workforce Study」によると、この経済低迷の状態によって、アメリカ人従業員の「仕事の安定性」に対する意識が高まり、回答者の40%が「人生を通じて、2社あるいは3社での経験が、キャリアモデルとしては理想的」と回答しています。また、回答者の39%は「できれば、ひとつの会社で終身働ければ望ましい」とも回答しています。
日本人から見たアメリカ人のステレオタイプとして、「より良い条件を求めて転職を繰り返す」「アグレッシブに自らの理想とするキャリアを追い求める」という姿を思い浮かべるかもしれません。
90年代以降、日本企業は「年功序列・終身雇用」という日本型雇用システム(組織指向)からアメリカ型の成果主義(マーケット指向)に方向転換してきました。しかし、ここ数年の経済低迷・不況という外部環境が、アメリカ人の自らのキャリア開発(例:より良い条件への転職)に対する意欲を減退させ、終身雇用を理想と考えるようになった意識の変化に注目する必要があります。
社外への転職を望まない傾向になるということは、社内において、従業員のやる気・モチベーションを高める工夫を積極的に行い、常に従業員の「Self-reliance(自立の精神)」をかき立てる施策が上司・人事担当者には求められます。
職場に不満がある従業員が「外に出たいが今はここで波風立てずに留まっておこう」と考えることで、職場の雰囲気は停滞し、結果として全職場の生産性にも影響します。企業もコスト削減で、フレッシュな風を起こす社員の採用・新ポストの創設が難しい今、どうやって社内の中から風を吹かせるかが鍵になるのだと思います。
ここで申し上げたいことは、従業員の意欲につながる要素は日本も米国もそれほど差はないということ。社内でのキャリアの機会、優れたリーダーの存在、そして能力発揮の場が提供される権限委譲。
日本では「グローバル人材育成」という言葉が声高く叫ばれていますが、厳しい外部環境にかかわらず、従業員のエンゲージメントを高める社内での議論が、国籍に係らず優秀な人材を育成するチャンスとも捉えることができると思います。
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